まずは丁寧な問診で経過と病態を把握すること
耳鳴り、難聴に対しての当院の考え方をお伝えします。
耳鳴り、難聴といっても、その方により病態、症状の程度、原因は様々なので、あくまでこういう傾向が多くみられ、当院ではどのように捉え、施術をしているのかを知っていただき、耳鳴り、難聴の症状で辛く、鍼灸を受けようか迷われている方の参考になれば幸いです。
耳鳴り、難聴で当院に来られる方は、耳鼻科を受診し、何かしらの治療(例えば薬、点滴、ステロイドなど)したけれど、症状が改善されなかったため、鍼灸を試したいと来院される方が多いです。
耳鳴り、難聴に問わず、頭痛、めまいなど、不定愁訴といわれる症状で来院された際、まず第一に重篤な疾患が隠れていないかを考えます。
問診や身体のチェックで脳血管障害や循環器系の問題がないかを分かる範囲で確認し、鍼灸適応外と何かしら疑われる場合は、専門の病院への受診を促します。医療機関によるMRI検査などで脳血管や神経に問題がなければ緊急性は少ないということで一つ安心して鍼灸治療に取り組めることになると思うので大事なところですね。
患者さんの中には、主訴が耳鳴りで来られる方もいれば、耳鳴りと難聴の両方を伴う方、耳閉感や耳の痛みも感じる方、また他には首の痛みなど別の主訴があって、時々耳鳴りが気になる方など、その方によって症状の程度、感じ方は様々です。
耳鳴りを感じる方の中には、耳鼻科での診察や検査をしても器質的な異常がなく、ビタミン剤や薬で様子をみるといった形で経過観察されている方もいらっしゃるかもしれません。
原因が分からないまま、症状が続くと精神的にも余裕がなくなり、それが症状を強くさせる要因になっていると感じます。
症状よりも全体のバランスを整えることが大切
当院では、耳鳴り、難聴の方に限らず、どのような症状でも全体のバランスを整えることを大切にしています。
全体のバランスを整えるというと少し抽象的でわかりにくいですが、東洋医学的にいうと、陰陽のバランスを整えるということです。(この表現もわかりにくいですね…笑)
陰陽のバランスを整えるとは、気・血・津液(水)、五臓を整え、身体の表裏に波及、停滞した寒・熱を交流させることです。(まだわかりにくいですね…苦笑)
わかりやすく一言でいうと身体の循環をよくすることです。
鍼灸で手や足に鍼やお灸をして、頭ののぼせがひいたり、胸のつかえがおさまったり、足が温かくなったり、食欲が湧いてきたり、気持ちが落ち着いたりするのは、滞っていたものが流れ、循環がよくなった反応として現れる変化だと捉えています。
人体を上・中・下3つに分けて考える時、下のイラストのように、胸から上を上焦、お腹周りを中焦、下腹部から下を下焦と分けます。
上焦・中焦・下焦での気・血・水(陰気と陽気)の巡りがよければ、寒・熱の停滞は生まれず、五臓(身体)をバランスよく養える状態だといえます。

耳鳴り、難聴に限らず、頭痛、鼻炎、結膜炎、花粉症、肩こりなどは、上のイラストのように上焦の熱の停滞(胸から頭にかけて赤く塗っているところ辺りに熱感がある)がみられます。熱が停滞すると感覚的には頭がぼーっとして物事に集中しづらかったり、なんか視界がはっきりしないなど感じたり、またその方の弱りやすいところに何かしらの症状として現れやすいです。
主に外的ストレス(外部環境:気温や湿度の変化)や内的ストレス(精神的ストレス:感情にのまれたり、ため込む)、飲食不節(食事の不摂生)、睡眠不足で休息できていない、などから気の巡りが悪くなり、中焦で気滞(気の滞り)が生まれ、上下の交流がうまくいかず、上焦で熱が停滞します。
気が停滞すれば、そこに熱が生まれます。
例えば満員電車など人が密集したところだと、熱気が生まれますよね。
また、熱は上にのぼる性質があるため、上焦は熱が多くなり、停滞がみられやすいです。
上下の交流が上手くいかないと、下焦で寒が停滞し、足のむくみや冷えに繋がります。
これを東洋医学では、上実下虚(上熱下寒)といい、上焦で余分な熱が停滞し、下焦が弱って冷えている、いわゆる冷えのぼせの時などがこの状態で、頭寒足熱の逆ですね。
更年期に現れることが多いですが、年齢的な衰えだけに限らず、ここに至る背景には生活環境の関わりが深いように思われます。
不調になった事から気付けること
現代では生活スタイルや仕事環境から、身体を動かすことに比べ、頭をよく使うことが多いので、意識の方向が身体へ向かうより、頭で考えることが圧倒的に多く、そのため、休息という判断を取るタイミングが遅い、または取れていない方も多いのではと感じています。
その結果、何かしらの不調が出てもおかしくはありません。
私自身の経験から言えることですが、不調になって気付くことは多いです。
不調は自分を省みるきっかけを与えられたということで、そこからどう考え、どう行動するか、自分と向き合うことでみえてくるものもあります。
とりあえずこの不調がなくなればいいのか、今後不調にならないようにしたいかは、その方の考え次第になりますが、不調は一つの問いかけを与えてくれているといえるかもしれません。
話が少しそれましたが、当院の施術としては鍼灸・整体を用いて、寒熱のバランスを整え、循環を促すことで症状緩和をはかります。
施術に関していうと、耳鳴り、難聴の方は、頭蓋骨や頸部の緊張を取ることも有効です。当院では頭は軽く触れるように、首やお腹も手技で調整します。首の調整は痛気持ちいい感じで好まれる方が多く、頭に触れるとスーッと眠られる方が多いです。
臨床を通して感じるのは、耳鳴り、難聴は症状の経過とともに予後が難しくなるので、症状でお困りで鍼灸を受けようか迷われている方は、勇気を出して当院までご相談ください。
また、鍼灸治療に呼吸ワークを組み合わせることによって、背骨や横隔膜にアプローチして、上腹部の力みが取れ、下腹部が使えるようになると、上熱下寒(冷えのぼせ)を体質面から整えていくことができます。自分で動くことでしか得られない作用があり、体質改善には大事なところになりますね。
呼吸ワークを行うと、頭への意識から身体の方にも意識がいき、頭がすーっと落ち着いたり、自分の中に静けさがつくられ、悩みは悩みとしてあっても大丈夫という感覚が育ってきます。なので、呼吸ワークもお勧めです。
以上が当院の耳鳴り、難聴についての考え方や治療の進め方になります。
耳鳴り、難聴に問わず、自律神経失調症や様々な不定愁訴に対しても身体の循環をよくし、全体のバランスを整えることを当院では大事にしています。
どのように症状がよくなっていく?
最後に、どのように症状がよくなっていくのか少しお話します。
よく「どれくらいで治りますか?」と聴かれることがありますが、ここは難しいところで、正直にお応えすると人によっても生活背景や治療に来られる頻度やペースも違うのでわからないです。
できるだけ辛い状態から早くよくなりたいという気持ちはよくわかります。だけど、あいまいに応えることはしたくないのでわからないとお応えしています。
あくまで私見ですが、一つ傾向として、よくなっていく過程はご自身の思った通りの変化にはいかないことが多いかもしれません。(例えば、1~2回で症状がパッとよくなるなど)
なので、ここでよくなると決めて通ってくださった方が結果的によくなっているという傾向があります。
よくなりやすい方の特徴として、例えば耳鳴りが辛い場合、治療後に耳鳴りが変わらなくても、肩回りが楽になった感覚や頭がすっきりした、なんか落ち着いたなどの心身の変化を受け取れる、つまり症状だけでなく身体全体の変化として感じられるというのがあります。
意識が耳鳴りにフォーカスとして当たっていたのが、少し俯瞰して身体全体として見れているということです。不思議なもので症状への強い執着が外れると、一つ楽になるのか、症状がよくなっていく途中で「耳鳴りを忘れる時間が増えた。慣れたんですかね。」と話される方がけっこういらっしゃいます。
身体全体として見る、感じるということは、何か一つ辛い現状が変わるヒントになるかもしれません。
どのくらいでよくなるかはわかりませんが、当院では今の現状をお伝えし当院ができる方針、選択肢をご提案したうえで、どうしたいか方向性を決めていただき、臨む未来へのサポートをしています。